と言って値段を下げるつもりはないようだったので、「もう少し考えます」と言ったのにどうも伝わらなかったらしく、ムッシューは車のドアを開け私たちに乗るように促してきた。
その後、意を決してもう1つのタクシーのマダムのところに声を掛けた。
私は先ほどムッシューに質問したのと同じことをたずねた。
Mme:往復と教会で1時間待ちを含めて60ユーロよ。でもあなたさっき、あっちのタクシーにも声を掛けてたわね。彼はいくらって言ってたの?
私:彼は同じ条件で90ユーロと言っていました。私は高いと思うので、あなたのタクシーにお願いしたいです。
Mme:それは高いわ。でも今私は他のお客さんを待ってるから、もう少し経ったらここに電話をちょうだい。もう1つ向こう側の大通りに行く予定だから、あなたもそっちへ歩いて行きなさい。
と言って、私にタクシーの電話番号が書いてあるカードを渡してきた。
そして突然、このやり取りを見ていたムッシューがマダムのタクシーに因縁をつけてきた。
かなり怒っていて、大きい声でなんて言っていたかはあまり聞き取れなかったけど、
「お前のタクシーにはベルフォールって書いてないだろ!?」みたいなことを言っていた。
わけもわからず怖いばかりで、しばらくどうしていいかわからなかったけど、ムッシューが激怒している中とりあえずマダムにお礼と後で電話することを目で合図して、マダムが指示した別の大通りへ歩いていくことにした。
私たち3人は大通りを話をしながら歩いていた。私は動揺していて、話した内容をあまり覚えていないけど。
どうしてムッシューはあんなにまで怒ったんだろう・・・選ぶ権利はこちらにあるはずなのに。
ふと、Mさんが私たちの後ろをムッシューのタクシーが徐行運転でついてきていることに気づいた。
さらに怖くなった。
なんで?私たちは乗りたくないのに。
とにかくムッシューを巻かなければと、ムッシューの走る道からは入れない一方通行の道に入ることにした。
その後ムッシューのタクシーが通り過ぎたのを確認して、私たちは大通りへ戻った。
そしてまたしばらく歩き、私はマダムのタクシーに電話を掛けた。
電話は苦手だ。ヒアリングがちゃんと出来ない・話せない私に私の意思が伝わるかどうか心配だった。
言葉を一つ一つ丁寧に話すことを心がけ居場所を伝えると、マダムのタクシーが私たちのいる場所に来てくれることになった。
5分も経たないうちにマダムのタクシーが来て、私たちはすばやく乗り込んだ。
お礼を告げてホッとしたのも束の間、ムッシューのタクシーが私たちの乗るタクシーの真後ろにいる!
なんと言う執念だろう。
またまた怖くなった。このまま後をついてきたらどうしようと。
でも、すぐにいなくなった。
ホッと胸を撫で下ろした瞬間だった。もうこれで大丈夫だと。
その後教会までの車中でマダムの話を聞いた。
全部は理解出来なかったけど、どうやらムッシューのタクシーとは、こういうことは2回目らしい。
「彼は狂ってるわ!」と何度も何度も言っていた。
私も本当にそう思った。
しばらくマダムも興奮していたけど、世間話をするようになってからは雰囲気も和やかになってきた。
私もやっと流れる景色を見る余裕が出来て、ロンシャン教会に着くのが楽しみでたまらなくなっていた。
マダムが「あそこに見えるのが教会よ」と教えてくれ、私たち3人は歓声を上げた。
タクシーは狭い山道を登って行き、やっと教会に着いた。私の胸は躍っていた。
Mme:さぁ着いたわよ。お代は最後にもらうから行ってらっしゃい。私はここで待ってるわ。
私たち3人は車が止まった瞬間に異変に気づいた。
マダムは気づいていない。
恐ろしいことに、あのムッシューが教会の駐車場で待ち伏せしていたのだ。
私たち3人はマダムにムッシューの存在を気づかせるため、何度もマダムを呼んだ。
マダムはそれに気づくと、顔色を変えて「ポリスを呼ぶわ」と言って携帯電話を手にした。
ムッシューは私たちのタクシーに歩み寄り、私たち3人の乗る後ろ側のドアを開けた。
そして「僕のタクシーは無料だよ、降りなさい、降りなさい。」と言っていた。
マダムはムッシューに「ポリスを呼ぶわよ」と言い、私たち3人はどうしていいのかわからなかった。
何度も降りろと促すムッシューに、私は「Pourquoi?(なぜ)」と繰り返して言った。
マダムは車を降り、ムッシューと駐車場近くの建物の方へ歩いていった。
私たち3人は少しの間車の中で待っていた。
その後マダムが
「降りなさい、私はここで待ってるから。1時間よ、15:15までね。」と言って私たちを車から降りるように促した。
それに従うように車を降り、私たちは教会の入り口へ向かった。
やっと恐怖から解放され、私たちはロンシャン教会を見ることが出来た。
でも見学しながらも、マダムのことが気がかりでしょうがなかった。何事もなければいいと・・・

教会の見学を終え、私たちはタクシーへ戻った。
まずマダムが待っていてくれたことにホッとした。
マダムは「まだ時間があるけどもう出発していいの?」と言ってくれたけど、私たちは十分楽しんだので車を出してもらうようにお願いした。
車が発進してからしばらくは、教会についての話やロンシャンの街の観光客のことについて聞いたりしていた。
本当はすぐにでもムッシューとのことはどうなったのかを聞きたかった。
でも、なんて聞いたらいいのかわからなかったし、聞いていいものかもわからなかったので黙っていることにした。
するとマダムがムッシューとのことを話し出した。
結局、マダムはポリスではなくマダムのご主人を呼んで、一件落着したようだった。
そして「やはり彼は狂ってるわ、こんなことが2度もあるなんて」と繰り返し言っていた。
マダムがかなり車を飛ばしていたので、行きの半分くらいの時間でベルフォールの駅に着いた。
その後支払いの時に「65ユーロよ。」と当初の交渉の時より+5ユーロ高い値段を請求されたが、一悶着あったこともあるし、お礼の意味も込めて65ユーロを支払った。
マダムには何度も何度もお礼を言い、タクシーを後にした。
ベルフォールでタクシーを選ぶところがやはり重要だった。
あの時初めからマダムのタクシーに声を掛けていたら・・・?
やっぱり今回と同じように、その後ムッシューのタクシーに声を掛けていたかもしれない。
そしてムッシューがマダムより低い値段を言ってきたら、ムッシューのタクシーにしていたかもしれない・・・
今さらこんなことを言ってもしょうがないけど、自分の選択のせいでこうなったことには違いないので責任を感じています。
今回一緒に旅をしたお2人には怖い思いをさせてしまって申し訳ないと思っています。
後で友達にもこの話をしましたが、女3人だったからこういうことになったんじゃない?と言われました。
確かに・・・
女性同士、言葉が喋れない、となるとやはり危険が多いですね。
私にもっとフランス語力があれば、と思うととても悔やまれますが、それだけが理由じゃないと思うので、今後旅をする時には十分気をつけなければいけないなと思いました。
まぁ、ここまで変質者的なのは稀だと思いますけどね・・・苦笑
■今日のひとくちフランス語
Pourquoi?(プるコワ)なぜ?